標記の事典が刊行された。版元は明治書院。奥付は2024年6月30日。今届いたばかりである。「中国/日本」は角書きである。当初『漢文学大事典』という本を作るのかと思っていたが、あえて『〈漢〉文化大事典』と命名している。911頁。大項目立項主義で、中国編252項目、日本編174項目である。これは、引く事典というより読む事典だろう。もちろん五十音目次もあるので、引くこともできる。
文学事典ではなく文化事典なので、語学・音楽・出版・思想・書画・諸芸と多岐にわたる。日本編では、全体にわたる項目として「漢文学の受容と変容」「中国観の変遷」「漢文訓読・訓点」「字書」「類書」「和歌と漢詩」「歌学と詩論」「書」「唐絵」「庭園」「漢籍の出版」がある。続いて時代順に項目をたててゆくが、江戸時代については、60項目以上が立てられている。「雅俗」「朱子学」「林家」「木門」「朝鮮通信使」「唐話学」「寺子屋」「俳諧」「老荘思想」など、こちらも多彩である。人物としては、秋成や宣長も立項されている(この2つは私が担当)、漢詩関係の立項が多いのはもちろんだが、散文ジャンルも仮名草子、談義本(私が担当)、洒落本、読本などがある。それぞれ読むと結構執筆者の色が出ていて面白い。100頁強を通読すれば、江戸時代〈漢〉文化史を読むことになる。明治以降もある。〈漢〉と〈〉で括ったのは、〈漢文〉化事典と誤解されないためだろうか。
相当長い年月をかけて完成した事典であるが、やはり出来てみると、なかなか画期的な事典だと思う。図書館・研究室そして漢文学に興味のある個人は必備であろう。
2024年07月10日
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