「近世小説史」をたどると、十八世紀、とくに享保から宝暦・明和あたりは、前期から後期への移行期で、混沌・未分化な状況です。そこをなんとか新たな枠組で把握できないかと試行錯誤してみた既発表の諸論を元に、削るべき削り、加筆すべきは加筆して、一書の体裁に整えてみました。
「仮名読物」という枠組と、書籍目録の分類項目である「奇談」そして、私の造語である「学説寓言」をキーワードに構成しました。一番古いものは1988年初出、ちと時間がかかりすぎの論文集ですが、なにかで縁があってご一読たまわれば幸いです。
ちなみに、「仮名読物」とは、ひらがなまたはカタカナ(交じり)で書かれ、読者によって楽しく、あるいは真面目に読まれた(江戸時代における)全ての散文の読物を指します。
目次を以下に挙げておきます。
序論 十八世紀の仮名読物
第一部 江戸産仮名読物の誕生
第一章 佚斎樗山の登場
第二章 常盤潭北と教訓書
第三章 『作者評判千石篩』考
第二部 奇談という領域
第一章 近世文学の一領域としての「奇談」
第二章 奇談から読本へ ―― 『英草紙』の位置
第三章 浮世草子と読本のあいだ
第四章 「奇談」の場
第五章 「奇談」史の一齣
第三部 <学説寓言>の時代
第一章 怪異と寓言 ―― 浮世草子・談義本・初期読本
第二章 前期読本における和歌・物語談義
第三章 大江文坡と源氏物語秘伝 ―― <学説寓言>としての『怪談とのゐ袋』冒頭話
第四章 『垣根草』第四話の<学説寓言>
第五章 『新斎夜話』第一話の<学説寓言> ―― 王昭君詩と大石良雄
第四部 仮名読物の諸相
第一章 怪異語り序説
第二章 「菊花の約」の読解
第三章 尼子経久物語としての「菊花の約」
第四章 濫觴期絵本読本における公家・地下官人の序文
第五章 『絵本太閤記』「淀君行状」と『唐土の吉野』
第六章 『摂津名所図会』は何を描いたか
初出一覧
あとがき

