2024年11月05日

日本人にとって教養とはなにか

 ブログを再開して1ヶ月ちょっと。さぼっている間に、本ブログで紹介したいと思っていた本がたまっていたが、順不同で紹介していきたい。タイムラグがかなりある本もありますが、お許しを。
 まず、鈴木健一さんの『日本人にとって教養とはなにか 〈和〉〈漢〉〈洋〉の文化史』(勉誠社、2024年10月)。
〈教養〉にずっとこだわりつづけた、鈴木さんならではの一書で、これまでの研究の蓄積を感じさせる好著である。序章に書かれているように、私達の子供のころ、百科事典ブームというのが確かにあった。我が家にはなかったが、友達の家に置いていることが多かった。世界文学全集みたいなのもブームだった。あのころはまだ教養の時代であった。平成のはじめごろから、大学から教養部が次々になくなってしまった。
 本書は、日本における「教養」もしくは「教養書」の歴史を平易に説いたものである。江戸時代に頁を多く割かれていること、和漢のみならず〈洋〉を重視して、和漢と並行する教養基盤と見立てている点に特徴がある。〈洋〉を〈和〉〈漢〉と同等に扱うのは、古典研究者の著書にはあまり見られない。しかし、いうまでもなく、今日の我々の教養は、和漢洋に基づいており、とくに〈洋〉は欠かせないものである。今日への繋がりを考えれば、〈洋〉は無視できないのは当然なのだ。
 本書は教養(書)の歴史を平易に説きつつも、この本を読むことで、教養が身につくという仕組みになっているように思う。時代時代における教養とは南アのか、教養がどういう本によって普及浸透していくのかを読み進めていくうちに、和漢洋の基礎的な教養も身についていくのである。教養について、ずっと考えてこられた鈴木健一さんだから書ける本と言えるだろう。〈和〉〈漢〉〈洋〉の展開の見取り図も説得力あるものである。以上、散漫な感想である。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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