数日前、大和文華館で行われている呉春展を観に行った。ここ数年、諸処で呉春の展示を見たが、この展示が、呉春の全体像を映し出すという意味では、もっとも見応えのあるものだった。
呉春は、秋成との交友もあり、ふたりによる画賛も少なくない。そして妙法院宮真仁法親王の厚い信頼を得て、同所に頻繁に出入りし、即興画を描くこともよくある。なんといっても、真仁法親王の肖像を描いている。この肖像画も今回展示されていた。随分前に行われた京博での「妙法院と三十三間堂」以来、お目にかかった。秋成と真仁法親王を研究対象としている私としては、小澤蘆庵と並ぶ重要人物である。
呉春は妙法院の推挙によって宮廷絵師ともなった。同時代には間違いなく高い人気を誇ったが、図録解説にもあるように、師である蕪村、そして呉春のすこし前に京都で圧倒的な存在感を示した円山応挙の陰に隠れて、あまり大々的に取り上げられることがない。しかし、今回は、量的にはそれほどでもないが、その渇を癒やすに十分な充実ぶりであった。
呉春は洒脱で、人づきあいが巧く、とんがった性格ではないように思う。それが、とんがった人に好かれた理由ではないかと思う。呉春の絵を見ていると、なにか安心する。品のよさと、バランスのよさ、落ち着きといったものを感じさせる。
蕪村には絵だけでなく俳諧も学んでいて、文学的だと思わせる絵もある。TPOを弁えた、融通無碍な画風は、個性的とはいえないが、人的交流を大切にする江戸時代には重宝がられたと思う。謡好きや食通ぶりを示す資料も展示されていて、呉春の人柄を感じさせる、私にとっては非常にありがたい展示だった。
2024年11月10日
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