2025年01月26日

随筆とは何か

小林ふみ子さんの論文を読んだタイミングがちょうど今日の研究会の直前だった。
今日の研究会とは、前のポストの最後のあたりにちょっと書いた川平敏文氏の科研が主催する「近世随筆研究会」。対面は国文研で行われたが、オンラインも併用。私はオンラインで参加した。会場には20名くらいの人がいるということだったが、錚々たるメンバーが集まっていた。
一人40分の発表で、質疑応答の時間もたっぷりととっていた。13時30分から18時まで。
最初は古畑侑亮さんの「抜書される近世随筆 ―江戸周辺地域の在村医の事例から―」で、ノートやメモの類いの資料から当代人の情報収集のあり方に迫ろうとする研究の事例報告というべきもの。在村医がどういう随筆を抜書しているのか、興味深いレポートである。
2番目は青山英正さんの「城戸千楯『紙魚室雑記』について――鐸舎(ぬてのや)と以文会」と題する発表。こちらは上方が舞台だが、以文会という「随筆を持ち寄る」勉強会?の実態を深掘りしたもの。学問の大衆化、拡散化のモデルとしての以文会。
3番目は理論家中森康之さんの、ずばり「随筆とは何か」。まずは研究会主催者の川平さんに軽くジャブを放つ。以下は勝手に脚色しているけど大体内容は押さえているつもり。
「近世随筆なんて面白いところに目をつけたのに、何のためにこの研究会やってるの?真面目すぎない?安定の川平なんか見たくない、悩んで悶絶しているニュー川平がみたいんだよ!ってメールしたら、じゃあてめえやってみろよ!ってことだったのでやる羽目になりました」
いずれ活字にするだろうから、あんまり詳しくここで披露するのはやめるけど、めっちゃ面白かった。ひとつのキーワードは「レイヤー」だな。じしんの専門である俳諧を例に、「考え方」革命を提唱。質疑も沸騰した。中森さんは、随筆研究を、いまやる意義があるだろう!学界の外にアピールする意味あるだろう?だからやるんでしょう?それ何よ?僕はこう考えてるけどね。ということを話したわけだ。その態度というか姿勢には共感しかない。
 とはいえ、少し違和感もあったからオンラインで感想を述べましたけどね。
 学界では数少ない戦っている人。今回も期待を裏切らないプレゼン。刺激を受けました。ありがとうございます。

 私は、近世随筆が、いわゆるエッセイとは違うということを、中村幸彦先生から教わった。中村先生の書いたものではなく、直接口頭で。大学院生のころ、たまたま学会からの帰りだったか、電車で中村先生のお隣に座ることになって、なぜか近世随筆の話をされていた。だから、近世随筆の話になると、その時の中村先生のお顔を思い出すのである。



posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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