2025年05月11日

吉原の怪談

 コンパクトサイズ(四六版並製)で江戸の怪談を次々に出版する白澤社が、今度は『吉原の怪談』(2025年4月)を出した。高木元・植朗子・渡辺豪・広坂朋信各氏の共著。大河ドラマ「べらぼう」を横目に、蔦屋重三郎の手がけた怪談本の紹介ときた。もう少し詳しく言うと、本書は、前半と後半にわかれていて、前半は、「べらぼう」では高橋克実の演じる吉原の引手茶屋の主人駿河屋市右衛門が作者の『烟花清談』という吉原が舞台の怪談。安永五年刊の読本。蔦重が手がけていることから、蔦重をサポートしていた駿河屋の入銀本と見なされている。実際は、他の本から摂った話もあるようだが、元ネタのわからない話もあるという。安永五年といえば、上方では上田秋成の『雨月物語』が出版されている。安永五年というのは鳥山石燕の『画図百鬼夜行』も刊行されていて、香川雅信氏が妖怪革命と呼ぶ年にあたるが、これもまた安永五年なのね。注釈は高木さんが主として担当しているようだが、さすがに行き届いている。ちなみに大河ドラマではこの本出てきていなかったような。後半は、吉原を舞台にした怪談を諸書から集めたもの。まさしく吉原の怪談である。そして、なぜ、このような怪談が伝えられるのか、という問いにたった解説が当時の吉原の実態を抉りながら、考えさせられるものとなっている。
 
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