2025年08月12日

国学の敗戦

 田中康二さんの久々の新刊『国学の敗戦』(ぺりかん社、2025年8月)が刊行された。奥付は8月15日。もちろん「終戦」記念日に合わせている。田中さんの研究は、本居宣長を見すえながらも、江戸派の村田春海から始まり、江戸派、そして本居宣長へと進み、宣長に関しての著書は多いが、まずは、中公新書の『本居宣長』につけばよい。しかし、宣長の研究から、さらに宣長学、宣長的なもの、国学、国学的なるものへと研究は拡がり、深まっていく。勢い、近代の宣長受容、戦前の思想と国学、さらには戦後へと、追究が続いてきた。
 よく、いわれる「戦争に利用された国学」。それって何だったのだろう?それを追究したのがこの本である。
 「国学的なるもの」は「国学」ではない。しかし「国学」は「国学的なるもの」と同一視され、その誤解は再生産されつづけている。序論で示されるこの問題意識を、各章で掘り下げていく。宣長や篤胤の言説の再検討と、その受容=誤解・誤読の歴史。近世文学の「時代に即して読む」方法は、実は近代の産物ではないのかという問題提起もある。田中さんは、「国学」と「国学的なるもの」とは違うと述べ、その観点から、近代以降、とくに戦前・戦後の「国学」言説を鋭く追究する。川田順、佐佐木信綱、戸坂潤、藤田徳太郎、村岡典嗣、保田與重郎らの言説が検討され、教科書への利用が明らかにされる。
 田中さんの国学愛あるいは国学研究愛を強く感じる一書である。
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