2025年10月27日

学会記(龍谷大学)

0月25日・26日は龍谷大学で日本近世文学会が行われた。
今回は、11人の研究発表。久しぶりに10人越えに加えて勧化本シンポジウムとあって、満腹感。
かくいう私も18年ぶりに研究発表した。4回目である。
初日の25日は6本の発表。質疑応答も活発であった。思うに質疑応答は以前5分で、消化不良の感が否めなかったが、10分にすることによって3、4人の方が質問に立つケースが多くなり(5分だと遠慮してしまうが、10分ならそれがあまりなくなるだろう)、発表者にとっても非常に勉強になるようになったと思う。印象に残ったのは、西村天囚の書いた戯作についてのイ・デンさんの発表。質問もいろんな立場から出ていて、「近代文学」っぽくないこの作品の由来について、様々考えられる面白い報告だった。そのあとの発表者の山本さんが、壇上から「飯倉さんはなぜ質問しなかったのだろう?」と言われたので驚いたが・・・。私が思い浮かべたのは馬琴の『質屋庫』の先蹤ともいうべき、質物が自分を質入れした主人の身の上話を次々に語るという話を含んでいる『当世不問語』である。もっとも天囚が読んだ可能性は低く、系譜的な位置づけにすぎないので、質問にはいたらなかった。西村天囚は、最近懐徳堂研究会が、種子島に調査に行き新資料を調査しているということもあるので、非常に私にとっても興味深い発表だった。イ・デンさんとは懇親会で十分話せた。彼女はコロンビア大学の院生(現在は早稲田の池澤さんの元で勉強中)なので、9月にコロンビア大学にお邪魔したばかりの私としてはその点でもお話が出来てよかった。私の教え子である仲さんは『懐硯』の「竹の子殺人事件」を扱ったが、仲さんらしいきめ細かい調査に基づくものであった。仲さんには、これまでの蓄積に一区切りをつけて、さらにひとつ上のステージに進んでほしい。
ベテランの田中則雄さん、山本秀樹さんの発表は流石というべき内容。田中さんの緻密な分析は以前京都近世小説研究会で伺ったものであり、そのとき非常に感心したものだが、今回は大高洋司さんとの質疑応答もあり、聞き応えがあった。読本の本質的議論が発展することを願わずにいられない。山本秀樹さんは近年、史料を詳細に分析する研究が多く、その粘り強さには驚かされる。
 同日の懇親会では、近世文学会の懇親会ではめずらしく、時間がかなり経っても「料理がたくさん残っている」というくらい、大量に用意されていて、みんなが「安心して」ゆっくりと食事できた。途中で廣瀬千紗子さんが挨拶をされ、初日の発表の講評を非常に丁寧にされていたのは異例なことだったが、あとでうかがうと、「挨拶は講評でもいいので」と言われたらしく、それは「講評をしてください」と同義に近いのでそうなったようであった。初日発表者には何よりのプレセントだっただろう。
 2日めのトップバッターの中山さんは、九大の後輩だが、しっかりと、堅実に発表と質疑応答をこなしていて感心した。その指導教員である、川平さんは漢文随筆の面白さを事例報告、これも安定の堅実さであった。
 午後イチの私の発表は、メトロポリタン美術館所蔵の合作富士山図という、妙法院宮真仁法親王および円山応挙・呉春画、六如・伴蒿蹊・上田秋成・小沢蘆庵・本居宣長ら15人が着賛した素晴らしい一軸についてである。ちなみに異例なことに、司会者が私の近況紹介のようなことを話しはじめたので、「はずかしいからやめて〜」と心の中で叫んでいたのだが、どうも和歌文学会ではこのような司会の仕方をするらしいと他の方からうかがって、そうなのかと思ったが、とまれ、恥ずかしかった。さて、この作品にご縁をいただいたのは本当に幸運であった(そのご縁を作って下さった皆様に感謝したい)。そして発表は、要旨を一部修正するわ、発表資料提出後の調査でわかったことを付け加えるわで、未完成感が濃く、かつ、間違いが多い、突っ込みどころ満載の発表であった・・・。にも関わらず、受け入れてくださった学会の寛容さに感謝したい。質問は4人からいただいた。就中長島弘明さんは、前日の懇親会で私に教えて下さった本資料の由来をフロアに共有してくださってありがたかった。また発表後は、和歌の読み、漢詩の読み、適切な読み下し、落款の読み、画賛についてのご意見などなど、非常に多くの人からご教示をいただいたし、感想(おおむね面白かったと言ってもらえた。もちろん素材がいいからであるが)もたくさんいただいた。学会発表をして本当によかったと思った。
 トリの永井先生の発表は、膨大な資料を駆使して、我々の知らない世界を教えて下さるもので、感銘を受けた。
 シンポジウムは、近世学会としては珍しく、勧化本という一つのジャンルに特化した議論となった。勧化本研究の進化、その最前線、そして他ジャンルとの関係など、私のように「奇談」を研究しているものにとっては、非常に参考になる話が多かった。
今回の大会運営に尽力された、開催校龍谷大学とりわけ、個人的なことで大変お世話になった和田さん、寺田さん、岩間さんをはじめとするスタッフの皆様、そして学会事務局の皆様に心より深謝申し上げます。
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