2025年12月19日

日本古書通信が終刊

 昭和9年に創刊された『日本古書通信』が、通巻1157号をもって、今月号で終刊した。わたしは、かつてこの雑誌をたぶん十数年にわたって購読していたが、書架のスペース問題で、購入を中止し、本好きな教え子にバックナンバーを譲ったことがある。それにも関わらず、一度だけ寄稿を依頼されたことがあり、恐縮しつつ書かせていただいた。かつての古書通信は、その後半に古書店の目録がずらりと掲載され、そこで見出して注文した本も少なくない。いまやネットオークションの時代となり、このスタイルは時代に合わなくなってしまったことが大きいだろう。それでも、読書家の雑誌として熱烈な支持者が少なくなかったに違いない。
 この雑誌に、3年間、終刊まで連載を続けた高木浩明さんのご好意で、ふたたび「古通」を毎月拝読できるようになったのは、この上なくありがたいことだった。高木さんの連載「古活字探偵事件帖」は、楽しく古活字研究の最前線を知ることの出来るすばらしいエッセイであった。単行本化が予定されているという。
 最終号も、各連載はいつものように淡々と、とはいえ「古通」への感謝がにじみ出る文章を綴っている。高木さんの「活字の流用と共用の問題を考える」は、古活字版の本質的な問題を改めて提示している。ここに引用されている鈴木広光さんの研究。鈴木さんのことは、このブログでは書いたことがないけれども、九州大学時代から少し知っていて、奈良女子大学勤務時代には、私自身が奈良女に非常勤でお世話になっていたこと、そしてもうひとつ野暮な公務で2年間ご一緒したことで、かなり親しくなっていった。奈良女の近くの蕎麦屋で昼間っから酒を飲み交わして盛り上がったこともある。鈴木さんは国語学者だが、出版史研究にも重要な業績を上げている。高木さんが引いている「嵯峨本『伊勢物語』の活字と組版」は、奈良女子大学で日本近世文学会が行われた折に、トップバッターで発表したもので、学会員に衝撃を与えた内容だった。それが活字の流用の問題。これは『日本語活字印刷史』に収められているようなので、ご興味の向きは是非お読み下さい。また高木さんが引用している森上修さんと鈴木さんとで共同研究されていたと思うが、近畿大学図書館に勤務しておられた森上さんには、一度近大のほこる貴重書室を案内していただいたことがある。近畿大にも非常勤に行っていたのである。小秋元さんとは荒木先生の研究会で名刺交換したような記憶が・・・。このように少しだけど縁のある方ばかりの名前が最終回に出てきて、なんだか嬉しかった。
 そして、この『古通』の編集に長く携わった樽見さんは、新しい個人雑誌を刊行されるらしいことを仄聞している。
 『日本古書通信』、長い間、ありがとうございました。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック