2025年12月19日

菱岡訳『椿説弓張月』の完結を祝す

菱岡憲司訳『椿説弓張月』がこの12月で5冊完結。すばらしいスピードである。最初の配本の時にもブログに書いたが、完結を祝ってまた書きます。
菱岡さんが、「毎月とどく古典文学全集」に憧れたという話を書いているが、まさに、この5冊本は、10月だったかお休みがあったが、8月に2冊配本があったので、ほぼほぼ毎月配本の感覚だった。そして毎回の解説も手を変え、品を変えで楽しみであった。まさに毎月届く古典文学だった。
最終巻の解説は、いつもより長く、菱岡さんの『椿説弓張月』論になっている。その中で、「譲りあう物語」という見立てが秀逸である。この物語の最後に、仁徳天皇兄弟の王位譲り合いを踏まえた、為朝・舜天丸の譲り合いの場面があるが、そこに馬琴は、政治の理想を見ており、それは保元物語のアンチテーゼだというのである。
 あとは悪人→善人となる演劇的趣向としての「もどり」の考察。これもしかりと思う。若い頃、学会でも発表されていたと記憶するが、『弓張月』を戯曲化した三島由起夫も言及していたのですね。このあたり面白く拝読。
菱岡さんの現代語訳と、現代語訳にもかかわらず原本の様式を可能な限り継承した造本は、実に見事であった。現代語訳の苦労ばなしとして、七五調の訳出について述べておられるが、さもありなん。しかし、これはかなりいい線を行っていたと思う。
それにしても、かつて古典文学大系で読んだ弓張月、筋を結構忘れていて、手に汗を握って読書を本当に楽しめた。極上のエンタテイメントでした。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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