2017年02月21日

KuLAに清き一票を!

デジタル人文学アウォーズ2016に、くずし字学習支援アプリのKuLAがノミネートされています。
みなさま、どうぞ清き1票をお願いいたします!。25日までだそうです。 http://dhawards.org/dhawards2016/voting-announcement-japanese/
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2017年02月09日

『欧州航路の文化誌』

人情としてわかっていただけると思うが、昨年の滞独生活以来、テレビをはじめとするメディアで、ドイツいやヨーロッパのことが出ていると、以前よりもぐっと引き込まれるようになった。他愛のない話であるが。日本文学にひきつけると、「洋行日記」「滞欧日記」のたぐいに興味をもつようになっている。江戸時代でいえば、「文学における異国情報」にである。
 そういう折り、同僚の橋本順光さんから鈴木禎宏氏との共編著『欧州航路の文化誌 寄港地を読み解く』(青弓社、2017年1月)を賜った。これはもう我慢できない。パラパラとめくる。面白そう。橋本さんの序章「欧州航路の文学―船の自由化と紀行の自国語化」を拝読。橋本さんといえば立て板に水のように途切れなく論理的なコメントのできる方で、いつも感心しているのだが、文章にもそれがよく現れている。
 航路の自国化と自国語化の問題。これは今日でも、ルフトハンザでいくか、全日空でいくかで、我々にとっては大違い(ちなみに、両方経験してますが)というのでわかるが、明治期に、1か月の船旅をするに外国船ではなく、船も日本のもの船員も日本人となったことが、いかにストレスがないか。まさに感覚として、これは航路の自国化なのである。それを河東碧梧桐などの言説からあぶり出す。
 さらに虚子や和辻哲郎の述懐、官立大学助教授が洋行でハクをつけて帰国するシステムなど興味津々、身に
つまされながら拝読。

 以下引用。
 欧州航路は、イギリスの東洋航路を徐々に逆行する形で成立し、半官半民の日本郵船は、「商戦軍」の先発隊として、船、船員、船長を自国化していった。この現象は、大学教官が洋行を経て自国化していったことと連動するものであり、同時に、東洋の権益への参入にほかならなかった。その点で欧州航路は、まさにイギリスの東洋航路を逆転したのである。そんな欧州航路から、熱帯季語を含め世界を俳句で表象するシステムを作り上げた高浜虚子、その航路を「湿度の弁証法」と要約して『風土』という文明論に練り上げた和辻哲郎、川路寛堂や渋沢栄一以来の洋行体験を国語教材に集約した井上赳は、幾度も上書きされ、積み重ねられてきた欧州紀行の自国語化のひとつの帰結と言えるだろう。つまり欧州航路の記録は、船長と高級船員の自国化、洋行による大学教員の自国化(飯倉注、外国文化を教えるお雇い外国人教師から洋行経験の日本人教師へ)、世界表象の自国語化が三位一体となった存在なのであり、それらの文脈から広義の文学として読み直されるべきものと言えるだろう。

 ちなみにあとがきによれば、「西回り」の世界一周によって形成される世界観と、「東回り」によって形成されるそれとの間に、大きな違いがあるという。それが「寄港地」(の順序)の問題である。これから各論考を拝読する楽しみがある。
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『近世文学史研究』

 ぺりかん社から『近世文学史研究』というシリーズが刊行される。全3巻完結。17世紀・18世紀・19世紀を、それぞれ数名で論じるという形になる。ぱっと見、『江戸文学』後継誌風の装丁だが、雑誌ではない。
第1巻の「十七世紀の文学 文学と歴史・思想・美術との関わりを通して」がこの1月に刊行された。監修は鈴木健一さん。以下私の独断的なまとめ方だが、歴史学からの提言を高埜利彦さん、絵画と和歌を主題として鈴木健一さん、医学と文学を主題として福田安典さん、芭蕉の編集力を主題として佐藤勝明さん、刊行軍書から西鶴を読む井上泰至さん、17世紀の浄瑠璃制作方法について黒石陽子さん、そして近世文学史の連載を木越治さん、という、第一線の方々が並ぶ。内容について、もうすこしちゃんとした説明をしなさいという声も聞こえないではないが、ともあれ店頭でご覧下さい。電子書籍もあるようだ。
 このシリーズは6月に18世紀、11月に19世紀が出る予定で、それぞれ私とロバート・キャンベルさんの監修となる。かなり前から準備をしていたこともあり、18世紀の原稿はそこそこ集まっているようである。17世紀に負けない論客を揃えましたぜ。17世紀同様、学際的な線で考えているので、日本史・思想史・美術史・芸能史からの論考もお願いしているところである。たぶん春の学会会場には並ぶのではと思う。
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2017年02月04日

『アプリで学ぶくずし字』の刊行迫る!

『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習支援アプリKuLA(クーラ)の使い方』(笠間書院、2017年2月)が、科研挑戦的萌芽研究「日本の歴史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」、および大阪大学文学研究科の「国際古典籍学」クラスターの成果の一部として刊行される。すでに見本が出来、関係者には順次送られるはずである。ネット予約も可能。2月10日ごろには書店に並ぶ予定。
 このプロジェクトで私たちは、とくに海外の日本研究者者のくずし字学習を支援を目指して、「くずし字学習支援アプリKuLA」を作成・公表した。研究メンバーの議論と、テスターの方々のご意見、そしてSE橋本雄太氏の類まれな設計能力が生んだすばらしいアプリである。2016年2月のリリース以来、5万ダウンロード超を記録している。アプリは歴史的典籍を利用する理系研究者や、くずし字を読みたいと思っている一般の方にも利用され、我々も驚く広がりを見せている。KuLAをさらに有効に活用していただくことと、我々の研究の意義を社会に発信する目的で、本書は企画されたのである。
 本書の内容は、当科研で開発したくずし字学習支援アプリKuLAの使い方の解説(バージョンアップ版に対応している)、および、KuLA開発の経緯(「KuLAの誕生」と題して「あとがきにかえて」で詳細に記している。ちなみにこれはジャズの某名盤をもじっているのだが)。KuLA開発に協力してくれた方の感想、開発チームメンバーの活動・実績報告、本科研や国文研・文学研究科が主催した2016年2月の国際シンポジウム「読みたい!日本の古典籍――歴史的典籍の画像データベース構築とくずし字教育の現状と展望―」での招待発表者の発表内容の概要を一般の方にわかりやすく記したものである。
 さらに、くずし字を学ぶための入門的な書籍やサイトの紹介、アプリの中では解説しきれなかった「読む」機能に登載した資料「しん板なぞなぞ双六」の注釈などを付している。
 版元の内容紹介はこちらである。
 当初の予定をかなりオーバーする92頁に、情報満載である。KuLAと完全連繋している「みんなで翻刻」の紹介もある。ネットでの試し読みもできるので、ご覧いただければ幸いである。
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2017年01月21日

「投企する古典性」研究会

 日文研荒木班の研究会「投企する古典性―視覚/大衆/現代」の1月研究会に参加。
 実ははじめての日文研。阪急桂駅からバスに乗り換えてどんどん登っていくとまだ消えない雪が数センチもつもっているところがあって、噂にたがわぬ所にあるなあと感心。
 この研究会は、国際的・学際的なところが私にとってはありがたくて、まったく予想もつかないお話がきけることと、普段ではお目にかかれない方と知り合えてお話ができるという点、醍醐味である。今日は、絵巻と漫画をめぐる発表。
山本陽子(明星大学)
「絵巻はマンガの祖先か?―絵巻とマンガの表現を比較する―」
佐々木果(明星大学)
「漫画の成立における欧米の影響と日本語の問題」
の2本立。 楊暁捷(カルガリー大学)、李愛淑(韓国放送大学)両氏がディスカサント。
いろいろと知らないことを教えてもらった。
 山本氏の「声」の表現の話興味深かった。また佐々木氏のグローバル漫画史のスケールの大きさ、論点のたしかさに舌を巻いた。いずれも明星大学とはまた自分勝手な文脈だが、この前行ったばかりで奇縁。お二人ともお話ができたし、なによりくずし字教育で独自のアプリを開発している楊先生とはじめてお会いでき、いろいろ意気投合したのは楽しかった。また日本「文」学史の河野貴美子さんも共同研究員で、はじめてお会いできた。他にも日文研のユニークなメンバーたちや、若い画家の方など、非常にいい出会いをさせていただき、元気をもらった。次はどういう発表になるのか、また楽しみである。
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天皇と和歌

鈴木健一さんの新著『天皇と和歌 国見と儀礼の1500年』(講談社選書メチエ、2016年11月)。日本文化と、天皇の和歌を関わらせて通史的に考えようと言うものだが、最初にあえて、現代の歌会始のことをもってくる構成である。たぶん講義なら、これは当然の導入だろう。鈴木さんは誰しも認める筆力の持ち主だが、先行研究を疎かにしないところがすごくて、この本の場合も、参考文献一覧を付してくれているが、実に目配りが行き届いていることに感心する。
江戸後期のところがちょっと物足りないのだが、それはこちらでひそかに(?)計画している論集があり、それで補わせていただけるかなと思っている。鈴木さんの本は、どの本も決して奇を衒わないベーシックなものなので、結局いつも参照させてもらうことになる。実にありがたい。
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『英草紙』の韓国語訳出版

丸井貴史さんと金永昊さんが『英草紙』の韓国語訳を出版した。
これは、快挙である。
是非紹介すべきであるが、全部ハングルだから、途方にくれていたところ、韓国文学に精通する日本近世文学者の染谷智幸さんが、ブログで詳細にその意義について紹介してくださっている。そういうことだったのか、と勉強になる。是非読んでいただきたく、リンクを張らせていただく。こちらである。
んー、染谷さんの文章を読むと、この本の注釈や解題の日本語訳が読みたいです。
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山本秀樹さんの江戸時代出版研究

山本秀樹さんの『江戸時代三都出版法大概』が出たのは2010年。そんなに前だったのかと驚く。この本は、三都の出版については、それぞれの都市の町触れを確認しなければならないということを、明らかにした。
その後も、山本さんの江戸時代出版システムの研究は続いている。次から次へと新しい事実、仕組み、資料を発見している。お送りいただいたので、その中から紹介しておこう。

「元禄二年「異説」の捜索―『大坂御仕置御書出之写』によって新たに知られる実態の考察」『岡大国文論稿』44、2016年3月
「せん年より御ふれふみ」『大坂岡山御触留』で補われる江戸時代大阪出版法令について(副題省略)」『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』42 2016年11月
「江戸時代大阪本屋仲間行司の固定的性格」『岡山大学文学部紀要』65 2016年7月

去年出ただけでもこれだけ。3つめの「固定的性格」は、はじめて行司一覧を表にしてみせたものではないだろうか。ここから交替制のはずの行司が、限られた少数の人間によって独占されていたことがわかる。その理由も明らかにされる。出版史がかわれば文学史も変わる。先に挙げた、江戸時代三都出版法大概も、非売品ということであり、もっと多くの方の目にとまるように、できればどこぞの本屋さんから出版という形でお願いしたい。

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2017年01月20日

『アプリで学ぶくずし字』刊行近し!

 くずし字学習支援アプリKuLA(クーラ)は、おかげさまで、5万ダウンロードを越えたが、このたび、私達は、大学などのくずし字教育でアプリを使う場合の参考書(マニュアル)として、またふだんWebに接することがなく、KuLAの情報をあまり知らないという方への情報提供書として、そして学校や図書館などにも置いていただくことを想定して、『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習アプリKuLAの使い方』(笠間書院)を刊行することにした。価格は800円+税。オールカラーでわかりやすく親しみやすく作っている。2月中旬に刊行予定である。いま「くずし字」授業のシラバスを書いている方は、参考文献として、この書籍を挙げていただくのに間に合うと思い、刊行前ではあるがここにアナウンスした。版元はもちろん、楽天ブックスでも予約できる。内容紹介はこちらで、このページから、試し読みへと進める。どうか立ち読みのつもりでご覧ください。
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2017年01月12日

「みんなで翻刻」が好スタート! 「みんなで翻刻」が好スタート!

 京都大学古地震研究会が10日にリリースしたWebアプリ「みんなで翻刻」が、スゴイことになっている。

 これは地震史料の画像を公開し、そこにアクセスした方に翻刻をしてもらうというものだ。一定のルールに基づいて翻刻してもらい、史料としての利用を便利にしようというものである。初心者でも参加できるように、このWebアプリの中には、くずし字学習支援アプリのKuLAが組み込まれている。PCでKuLAを使いたいというご希望も、私のところに寄せられていたのだが、この問題もこれで解決だ。

 約3000枚を公開、3日とたたず、300枚にすでに手がつけられ、100枚は翻刻が終わっているというのだ。全部終わるのに3年はかかるだろうと見られたのが、このペースでは半年以内には終わってしまう勢いだ。

 一つの史料には、誰でもアクセスできるので、間違いもどんどん訂正されていき、想像以上に正確な翻刻になっているようだ。だから遠慮せずに力試しのつもりで翻刻に参加してもらっていいのである。
 
 翻刻参加者がどんどん現れ、14000字翻刻した猛者もいるのだ。ランキング形式になっていて、誰が何文字翻刻したかが表示される。この翻刻史料を使って、研究も飛躍的に進むというものである。
 
翻刻はプロがするもの、という固定観念は崩された。一般の人でも読める人はかなり正確に読める。そして、力を合わせれば、相当正確な物になっていく。
 
 これって、いろいろなことに応用がききそうだ。
 たとえば「みんなで注釈」とか、「みんなで翻訳」とか。後者はすでにあるかもしれないですね。
そして、この「みんなで翻刻」プロジェクトに、次なるビッグニュースがありそうだ。しかしそれはまた、後日報告となるだろう。ワクワクするような話なので、どうぞお楽しみに。
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2017年01月05日

高麗大訪問研究 日本文学ワークショップ

韓国高麗大の日本文学を研究している教員・学生が大阪大学を訪問し、ワークショップを開催します。発表するのは、それぞれの院生です。2015年にも行われたもので、互いの研究方法を知るよい機会となります。

高麗大学校訪問研究 日本文学ワークショップ

日時 2017年1月19日(木) 14:00〜17:30
会場 大阪大学文学研究科本館大会議室

14:10〜15:10
1.金潾我 (高麗大学大学院博士課程)  
近松門左衛門 『平家女護島』の俊寛像考察―『平家物語』との比較を通して
2. 金智慧(大阪大学大学院博士前期課程)
明治前期における散切物受容の諸相  

15:20〜16:20
3.朴祉R (高麗大学校大学院博士課程)
NHK大河ドラマと関ヶ原合戦―家康と三成の人物像変遷
4. 岡部祐佳 (大阪大学大学院博士前期課程)
「往来物」、「書簡文例集」と「文学」―ジャンル越境的研究への挑戦

16:30〜17:30
5.朴眞鉉 (高麗大学校大学院修士課程)
中世日本文学に現れた関東武士の特殊性ー『平家物語』を中心にー
6. 有澤知世(大阪大学大学院博士後期課程)
錦絵新聞を読む―近世文芸からの影響に注目して―
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2017年01月03日

くずし字出前授業in名古屋

日本近世文学会では、くずし字を教える出前授業を行っている。学会HPにPDFを置いている『和本リテラシーニューズ』2号ではその実践報告もあるのでご参照いただきたい。
さて、名古屋大学附属中学校でも、加藤弓枝さんと三宅宏幸さんが出前授業を行い、その報告を、同校教諭の加藤直志さんとともに、『名古屋大学附属中・高等学校紀要』第61集(2016年12月)に掲載している。これを報じた中日新聞の記事も再掲している。どのように授業を展開したかがよくわかり大変参考になる。
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10年目

本年もよろしくお願いいたします。

2008年にブログをはじめたので10年目となる。

「読んでますよ」と言ってくださる読者の方の声にはげまされて、ここまで細々と続けることができた。
カウンターを付けているが、どういう数え方なのか、運営側のアクセス解析とは数字が違う。実際は大体毎日500〜1000くらいのアクセスをいただいているようです。しかし付けているカウンターでも50万アクセスに近づいてきたので、これを当面は目標としてゆきたい。
学界時評のつもりも、書評のつもりもない、単なる感想ブログである。公的性格はまったくないし、バイアスがかかっているのはお許しいただきたい。とりあえず3点。

 藤田真一さん編注『蕪村文集』(岩波文庫、2016年12月)。江戸時代の『蕪村翁文集』の配列を軸に編まれたもの。画は載せられないけど画賛の文もあり。特別な関係の中で書かれた文に興味ある私としてはありがたい。
 田中道雄先生をはじめとするグループによる方壺宛蝶夢書簡の翻刻が『ビブリア』146号(2016年10月)に載る。まず50通のうちの23通。あとは次号。35通目に宣長批判があるらしい。
 野澤真樹さんの「『世間妾形気』最終話と伏見」(『国語国文』2016年11月)。非常によく調べていて感心。成長を感じました。

今年は「短くても書かないよりはまし」をモット―にいたします・・・。



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2016年12月26日

阪大所蔵資料の画像公開

 国文研が進めている古典籍の画像データベース化の事業を展開する拠点校のひとつとして大阪大学が選ばれ、私がその委員をしています。さて、平成27年度に国文学研究資料館の「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」事業により撮影した画像がさきごろ公開されました。懐徳堂文庫と適塾資料のかなり重要なものが、多数あり、研究に資するところも大きいと思うので、ここで告知いたします。
(阪大図書館のニュース)
http://www.library.osaka-u.ac.jp/news/20161222_common.php
(画像公開の案内ページ)
http://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/database.html
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2016年12月24日

萩原広道研究への歩み

 森川彰著『萩原弘道研究への歩み―森川彰先生卒寿記念論文集』(関西大学図書館手紙を読む会編、2016年9月)。森川彰先生のお名前はもちろん存じ上げているが、面識はなかったと思う。卒寿記念として、手紙を読む会のメンバーが、先生の論文をくまなく集めて、2冊本として刊行した。1963年から2012年、つまり50年にわたって執筆された諸論文を再編、電子複写化して収録したものである。5部構成で、
1 萩原広道研究
2 国学研究
3 書誌学
4 随筆
5 図書館学
であり、研究業績目録も付されたもの。森川彰全集と呼んでいいものだろう。
1 の広道研究は、書簡の翻字紹介が大部分を占め、広道研究には必読のものだろう。このようにまとめていただいた意義は非常に大きい。
 手紙を読む会のみなさんが、それぞれ一人ずつあとがきを書いていらっしゃり、森川先生のお人柄がうかがえるものとなっている。
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2016年12月23日

ことばの魔術師西鶴

 篠原進・中嶋隆編『ことばの魔術師西鶴 矢数俳諧再考』(ひつじ書房、2016年11月)。
「矢数俳諧」とは不思議な「文芸」である。「通し矢」に準えられる、速吟・独吟。記録を争う競争性とイベント性。西鶴浮世草子つまり散文との位置関係。さまざまな問題に満ちていて、様々なアプローチを可能にする。
 西鶴と俳諧の研究者が、この矢数俳諧に、それぞれの流儀で挑む。驚くほどその人の研究手法が浮かび上がる論集であり、かつそれがどれもこれも面白い。つまり、これは矢数俳諧を主題とする論集という企画の勝利だなと思った。
 もう5年も前に伊丹の柿衞文庫で行われたシンポジウムが本書の原点だという。そのシンポジウムに私も出席していた。実はこのブログでも書いている。非常に緊迫感のある、面白いシンポジウムだったということを思い出した。
 しかし、それから5年の間に西鶴について私なりに考えることもあって、今この論集に触れると、散文における議論の閉塞感(それは私だけが勝手に感じているものかもしれないが)に比べて、この矢数俳諧の議論の自由さ、発想の斬新さには目を見張る。
 西鶴は俳諧師。ここを論じて、やはり西鶴・・・、と改めて思う。個人的に面白かったのは染谷さんの「命がけの虚構」。アサートンさんの「アメリカにおける矢数俳諧研究の可能性」。いろいろ考えさせてくれました。
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2016年12月22日

長崎先民伝注解

 本ブログを書評ブログだとか、近世文学研究者必読だとか、言ってくださる方がいるのは、まことに恐縮至極なのであるが、実際はそんな大層なものではない。ときたま力は入るときもあるが、大抵は、さっさと目を通して、これは紹介しとかなきゃと思い(思っただけで終わることもあり)、自分の興味のあるところを拾い読みしては、主観的な感想を書き付けているだけなのである。そのようなものだと思ってお読みいただければ幸いである。
 さて若木太一・高橋昌彦・川平敏文編『長崎先民伝注解』(勉誠出版、2016年11月)が刊行された。私を育ててくれた九州の研究会が作った、研究会の成果であり、とても嬉しい。
 西の先哲叢伝という言われ方もしているように、長崎の主要な近世人物事典として、基本中の基本となる本で、丁寧な注解はまことにありがたい。例によってこの本の生まれたいきさつを記した川平敏文さんの「あとがき」を先ずは読むわけだが、これがとてもいい。これはもちろん私が雅俗の会というこの研究会にいたから、であるのだが、川平さんが、寥々たる状況になってしまった研究会を再興せんと、この『先民伝』を読むことを始めたというあたりはぐっときてしまう。先民の墓碑廻りで、ビデオとカメラを駆使する「准会員」の合山林太郎さんの姿が彷彿とするところも面白い。
 長崎といえば若木太一先生で、長崎に調査に行くと、必ず若木先生がお見えになり、さまざまなご教示を下さったことが、いろいろと蘇る。この先民伝を読む会にも、いつもお見えになっていたという。さもありなん。仄聞するところによれば著書をおまとめになる計画もあるとか。鶴首鶴首。
 
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2016年12月21日

書籍文化史18

 悉皆といえば、高木浩明氏「古活字版悉皆調査目録稿」の連載が8回目となる、『書籍文化史』18号。年末恒例となったが、もう18号か。鈴木俊幸さんが科研で出し続けている書籍文化に関わる論考をあつめた研究誌である。18号ということは1999年に第1号を出したということか?それならば奇しくも岩瀬文庫悉皆調査開始と同じころということになる。勉誠出版の『書物学』は、本誌のマインドから生まれた雑誌よなあ。ともかく、このごろの書物学ブームに火を付けた立役者が鈴木さんであることは間違いない。
 その『書籍文化史』がある時から、やたらに分厚くなる。それも道理、100頁を超えようと言う高木氏の古活字本の悉皆調査目録の連載が開始されたからである。どういう方なのかと思っていたが、何年か前に立命館大学でお会いして、結構お若いので吃驚したものである。これまた強固な志がないと、やろうとは思わない一大事業ではないか。
 悉皆といえば鈴木さんの書籍関係論文目録も果てしない。この仕事には何度もお世話になっている。またページを繰るだけでも、書籍文化研究の推移を感じ取ることができる。まことに、塩村・高木・鈴木の三人は、悉皆者!・・・ですね。
*追記:間違いを高木さんからご指摘いただきましたので、タイトルと文章を改めました。
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三河に岩瀬文庫あり

 塩村耕さん。このブログでも何度かご登場いただいている。塩村さんの人生をかけた一大仕事といえば、岩瀬文庫の悉皆書誌調査である。愛知県西尾市にあるこの岩瀬文庫、知る人ぞ知る、くせもの揃いの本が山のようにある、岩瀬弥助旧蔵の文庫である。塩村さんは2000年から、この文庫の悉皆調査をはじめた。来年調査完了だという。とにかく近世文学の研究を本格的にやりはじめると、ここの文庫にどうしてもお世話になることになる。稀本・珍本ぞろいである。展示や書籍で発信してこられ、また西尾市が「本のまち」として市あげて文庫をサポートし、その名はかなり本好きには広まった。根本には、塩村さんの悉皆調査への強い志がある。
 塩村さんは1000点完了時点で、途中経過を報告しているが、1点1点内容をきちんと読んだ上での記述であり、これが万に及ぶのだから、気が遠くなる。普通出来るとは思わない。しかし塩村さんは時間の許す限り文庫に通い、ゴール間近に来ているのである。前にもここに書いたと思うが、悉皆調査のような、壮大なことをやり遂げるためには中途半端な志ではだめで、かなりのことを捨てないとできない。塩村さんのように、こころおどるような論文が書ける人だと、いろいろと書きたいことも山のようにあるだろうに、ある程度あきらめなければならないはずだ。これが非常にむずかしいのである。また、頼まれる仕事についても、かなり断っておられるはずだ。ある程度非情にならないとできないし、対象への並々ならぬ持続愛がなければできないのである。言うまでもないが、私などののようなものには絶対に真似できないこと。まったく敬愛に値する。
 さて、悉皆目録刊行への序幕ともいうべきブックレットが刊行された。『三河に岩瀬文庫あり』(風媒社)だ。岩瀬文庫の概要がわかりやすく記され、珍本の一部が紹介され、達人達の座談会があり、と豊富な内容だ。コラムの「古典籍豆知識」は単なる豆知識ではなく深い洞察に裏打ちされた文章で示唆に富む。書名は本の作り手の意志を尊重するなら「外題」でとるべきこと、書籍史料は「現状維持」ではなく積極的に補修されるべきであること、などなど。850円+税、とお得である。
 
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2016年12月08日

懐徳堂の企画展・図録・事典

 12月もどんどん過ぎて行く。うっかりしていると、歩いて5分ちょっとの大阪大学総合学術博物館で展示中の企画展「大阪の誇り―懐徳堂の美と学問」を見逃したりしかねない。そんなことになったら大変と、本日見て参りました。数年前の大阪歴史博物館での展示と少し味わいが違う展示。ひとつは重建懐徳堂100年を記念した展示であるため、写真を含めてそこにひとつ照明が当たっているという点。そして、修復された谷文晁の「帰馬放牛図」などの絵画や書(例の秋成履軒合賛の鶉図もある)、また印章の展示に力を入れているところだろう。個人的には、江戸の懐徳堂が廃校ときまり、最後の教授並河寒泉が、学校を立ち去るにあたって詠んだ「出懐徳堂歌」が、じんときた。
 立派な図録も出ている。『大阪大学総合学術博物館叢書13 懐徳堂の至宝』(大阪大学出版会)だ。出品されていない物も多数掲載解説され、懐徳堂入門として最適の図録である。最初に秋成履軒合賛鶉図が載っているのは感激。またこの機に、使いやすい『懐徳堂事典』の増補改訂版がやはり大阪大学出版会から出版された。どちらも湯浅邦弘氏の労作。事典は大幅に項目が増えているようである。懐徳堂記念会の秋季記念講座も連動して講演会を開催したが、集客がよかった。
 大阪大学は、懐徳堂を精神的源流として位置づけている。今後も私なりに、様々なイベント・講義などを通して、微力をつくしたい。来年度は、そういう授業を担当することになっている。
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