2017年02月24日

自著を語る

日本の古本屋メールマガジン221号、自著を語る(番外編)に、拙編著『アプリで学ぶくずし字』についてのエッセイを書きました。こちらです。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 私の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月23日

表記の思想

入口敦志『漢字・カタカナ・ひらがな 表記の思想』(平凡社、2016年12月)。
すでに、いくつかのレビューもあり、好評のブックレット。国文研が出す〈書物をひらく〉シリーズの2冊目。入口さんは、このごろ大きなテーマのシンポジウムでよく発表やコメントを依頼される引っ張りだこの研究者。とくに最近は、東アジアの文献書誌学についても見識があり、間口が広い。

本書は、漢字・カタカナ・ひらがなの、どの表記を用いるかは、思想の問題だということを説く。

この観点は重要である。私も「仮名読物」なる造語を近世散文史に使うことを提唱したことがある。
(科研報告書『「奇談」書を手がかりとする近世中期上方仮名読物史の構築』2007年)

だから、非常な共感をもって本書を読むことが出来た。
しかし、入口さんの扱う文献は縦横無尽である。そこが真似できないところである。国文研でビッグデータを仕事として扱ってきた入口さんは、巨視的な観点からの提言を最近多くなさっている。国文研で提供される予定の30万点の歴史的典籍の画像を全部見ることは可能だとし、そこから生まれる研究テーマについて提言されたことは記憶に新しい。
今回の本も、『古今和歌集』、『平家物語』、医学書、そして山鹿素行・本居宣長と自在に操る。

さまざまなアイデアが満載の知的冒険の書といえるだろう。一般向けにライトなタッチで書かれているところも配慮が効いている。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月21日

KuLAに清き一票を!

デジタル人文学アウォーズ2016に、くずし字学習支援アプリのKuLAがノミネートされています。
みなさま、どうぞ清き1票をお願いいたします!。25日までだそうです。 http://dhawards.org/dhawards2016/voting-announcement-japanese/
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月09日

『欧州航路の文化誌』

人情としてわかっていただけると思うが、昨年の滞独生活以来、テレビをはじめとするメディアで、ドイツいやヨーロッパのことが出ていると、以前よりもぐっと引き込まれるようになった。他愛のない話であるが。日本文学にひきつけると、「洋行日記」「滞欧日記」のたぐいに興味をもつようになっている。江戸時代でいえば、「文学における異国情報」にである。
 そういう折り、同僚の橋本順光さんから鈴木禎宏氏との共編著『欧州航路の文化誌 寄港地を読み解く』(青弓社、2017年1月)を賜った。これはもう我慢できない。パラパラとめくる。面白そう。橋本さんの序章「欧州航路の文学―船の自由化と紀行の自国語化」を拝読。橋本さんといえば立て板に水のように途切れなく論理的なコメントのできる方で、いつも感心しているのだが、文章にもそれがよく現れている。
 航路の自国化と自国語化の問題。これは今日でも、ルフトハンザでいくか、全日空でいくかで、我々にとっては大違い(ちなみに、両方経験してますが)というのでわかるが、明治期に、1か月の船旅をするに外国船ではなく、船も日本のもの船員も日本人となったことが、いかにストレスがないか。まさに感覚として、これは航路の自国化なのである。それを河東碧梧桐などの言説からあぶり出す。
 さらに虚子や和辻哲郎の述懐、官立大学助教授が洋行でハクをつけて帰国するシステムなど興味津々、身に
つまされながら拝読。

 以下引用。
 欧州航路は、イギリスの東洋航路を徐々に逆行する形で成立し、半官半民の日本郵船は、「商戦軍」の先発隊として、船、船員、船長を自国化していった。この現象は、大学教官が洋行を経て自国化していったことと連動するものであり、同時に、東洋の権益への参入にほかならなかった。その点で欧州航路は、まさにイギリスの東洋航路を逆転したのである。そんな欧州航路から、熱帯季語を含め世界を俳句で表象するシステムを作り上げた高浜虚子、その航路を「湿度の弁証法」と要約して『風土』という文明論に練り上げた和辻哲郎、川路寛堂や渋沢栄一以来の洋行体験を国語教材に集約した井上赳は、幾度も上書きされ、積み重ねられてきた欧州紀行の自国語化のひとつの帰結と言えるだろう。つまり欧州航路の記録は、船長と高級船員の自国化、洋行による大学教員の自国化(飯倉注、外国文化を教えるお雇い外国人教師から洋行経験の日本人教師へ)、世界表象の自国語化が三位一体となった存在なのであり、それらの文脈から広義の文学として読み直されるべきものと言えるだろう。

 ちなみにあとがきによれば、「西回り」の世界一周によって形成される世界観と、「東回り」によって形成されるそれとの間に、大きな違いがあるという。それが「寄港地」(の順序)の問題である。これから各論考を拝読する楽しみがある。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『近世文学史研究』

 ぺりかん社から『近世文学史研究』というシリーズが刊行される。全3巻完結。17世紀・18世紀・19世紀を、それぞれ数名で論じるという形になる。ぱっと見、『江戸文学』後継誌風の装丁だが、雑誌ではない。
第1巻の「十七世紀の文学 文学と歴史・思想・美術との関わりを通して」がこの1月に刊行された。監修は鈴木健一さん。以下私の独断的なまとめ方だが、歴史学からの提言を高埜利彦さん、絵画と和歌を主題として鈴木健一さん、医学と文学を主題として福田安典さん、芭蕉の編集力を主題として佐藤勝明さん、刊行軍書から西鶴を読む井上泰至さん、17世紀の浄瑠璃制作方法について黒石陽子さん、そして近世文学史の連載を木越治さん、という、第一線の方々が並ぶ。内容について、もうすこしちゃんとした説明をしなさいという声も聞こえないではないが、ともあれ店頭でご覧下さい。電子書籍もあるようだ。
 このシリーズは6月に18世紀、11月に19世紀が出る予定で、それぞれ私とロバート・キャンベルさんの監修となる。かなり前から準備をしていたこともあり、18世紀の原稿はそこそこ集まっているようである。17世紀に負けない論客を揃えましたぜ。17世紀同様、学際的な線で考えているので、日本史・思想史・美術史・芸能史からの論考もお願いしているところである。たぶん春の学会会場には並ぶのではと思う。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月04日

『アプリで学ぶくずし字』の刊行迫る!

『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習支援アプリKuLA(クーラ)の使い方』(笠間書院、2017年2月)が、科研挑戦的萌芽研究「日本の歴史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」、および大阪大学文学研究科の「国際古典籍学」クラスターの成果の一部として刊行される。すでに見本が出来、関係者には順次送られるはずである。ネット予約も可能。2月10日ごろには書店に並ぶ予定。
 このプロジェクトで私たちは、とくに海外の日本研究者者のくずし字学習を支援を目指して、「くずし字学習支援アプリKuLA」を作成・公表した。研究メンバーの議論と、テスターの方々のご意見、そしてSE橋本雄太氏の類まれな設計能力が生んだすばらしいアプリである。2016年2月のリリース以来、5万ダウンロード超を記録している。アプリは歴史的典籍を利用する理系研究者や、くずし字を読みたいと思っている一般の方にも利用され、我々も驚く広がりを見せている。KuLAをさらに有効に活用していただくことと、我々の研究の意義を社会に発信する目的で、本書は企画されたのである。
 本書の内容は、当科研で開発したくずし字学習支援アプリKuLAの使い方の解説(バージョンアップ版に対応している)、および、KuLA開発の経緯(「KuLAの誕生」と題して「あとがきにかえて」で詳細に記している。ちなみにこれはジャズの某名盤をもじっているのだが)。KuLA開発に協力してくれた方の感想、開発チームメンバーの活動・実績報告、本科研や国文研・文学研究科が主催した2016年2月の国際シンポジウム「読みたい!日本の古典籍――歴史的典籍の画像データベース構築とくずし字教育の現状と展望―」での招待発表者の発表内容の概要を一般の方にわかりやすく記したものである。
 さらに、くずし字を学ぶための入門的な書籍やサイトの紹介、アプリの中では解説しきれなかった「読む」機能に登載した資料「しん板なぞなぞ双六」の注釈などを付している。
 版元の内容紹介はこちらである。
 当初の予定をかなりオーバーする92頁に、情報満載である。KuLAと完全連繋している「みんなで翻刻」の紹介もある。ネットでの試し読みもできるので、ご覧いただければ幸いである。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

専門図書館

『専門図書館』第281号(専門図書館協議会、2017年1月)に、「くずし字学習支援アプリKuLAについて」という文章を書かせていただきました。要は紹介の文章ですが。
posted by 忘却散人 | Comment(3) | TrackBack(0) | 私の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月21日

「投企する古典性」研究会

 日文研荒木班の研究会「投企する古典性―視覚/大衆/現代」の1月研究会に参加。
 実ははじめての日文研。阪急桂駅からバスに乗り換えてどんどん登っていくとまだ消えない雪が数センチもつもっているところがあって、噂にたがわぬ所にあるなあと感心。
 この研究会は、国際的・学際的なところが私にとってはありがたくて、まったく予想もつかないお話がきけることと、普段ではお目にかかれない方と知り合えてお話ができるという点、醍醐味である。今日は、絵巻と漫画をめぐる発表。
山本陽子(明星大学)
「絵巻はマンガの祖先か?―絵巻とマンガの表現を比較する―」
佐々木果(明星大学)
「漫画の成立における欧米の影響と日本語の問題」
の2本立。 楊暁捷(カルガリー大学)、李愛淑(韓国放送大学)両氏がディスカサント。
いろいろと知らないことを教えてもらった。
 山本氏の「声」の表現の話興味深かった。また佐々木氏のグローバル漫画史のスケールの大きさ、論点のたしかさに舌を巻いた。いずれも明星大学とはまた自分勝手な文脈だが、この前行ったばかりで奇縁。お二人ともお話ができたし、なによりくずし字教育で独自のアプリを開発している楊先生とはじめてお会いでき、いろいろ意気投合したのは楽しかった。また日本「文」学史の河野貴美子さんも共同研究員で、はじめてお会いできた。他にも日文研のユニークなメンバーたちや、若い画家の方など、非常にいい出会いをさせていただき、元気をもらった。次はどういう発表になるのか、また楽しみである。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

天皇と和歌

鈴木健一さんの新著『天皇と和歌 国見と儀礼の1500年』(講談社選書メチエ、2016年11月)。日本文化と、天皇の和歌を関わらせて通史的に考えようと言うものだが、最初にあえて、現代の歌会始のことをもってくる構成である。たぶん講義なら、これは当然の導入だろう。鈴木さんは誰しも認める筆力の持ち主だが、先行研究を疎かにしないところがすごくて、この本の場合も、参考文献一覧を付してくれているが、実に目配りが行き届いていることに感心する。
江戸後期のところがちょっと物足りないのだが、それはこちらでひそかに(?)計画している論集があり、それで補わせていただけるかなと思っている。鈴木さんの本は、どの本も決して奇を衒わないベーシックなものなので、結局いつも参照させてもらうことになる。実にありがたい。
posted by 忘却散人 | Comment(1) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『英草紙』の韓国語訳出版

丸井貴史さんと金永昊さんが『英草紙』の韓国語訳を出版した。
これは、快挙である。
是非紹介すべきであるが、全部ハングルだから、途方にくれていたところ、韓国文学に精通する日本近世文学者の染谷智幸さんが、ブログで詳細にその意義について紹介してくださっている。そういうことだったのか、と勉強になる。是非読んでいただきたく、リンクを張らせていただく。こちらである。
んー、染谷さんの文章を読むと、この本の注釈や解題の日本語訳が読みたいです。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

山本秀樹さんの江戸時代出版研究

山本秀樹さんの『江戸時代三都出版法大概』が出たのは2010年。そんなに前だったのかと驚く。この本は、三都の出版については、それぞれの都市の町触れを確認しなければならないということを、明らかにした。
その後も、山本さんの江戸時代出版システムの研究は続いている。次から次へと新しい事実、仕組み、資料を発見している。お送りいただいたので、その中から紹介しておこう。

「元禄二年「異説」の捜索―『大坂御仕置御書出之写』によって新たに知られる実態の考察」『岡大国文論稿』44、2016年3月
「せん年より御ふれふみ」『大坂岡山御触留』で補われる江戸時代大阪出版法令について(副題省略)」『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』42 2016年11月
「江戸時代大阪本屋仲間行司の固定的性格」『岡山大学文学部紀要』65 2016年7月

去年出ただけでもこれだけ。3つめの「固定的性格」は、はじめて行司一覧を表にしてみせたものではないだろうか。ここから交替制のはずの行司が、限られた少数の人間によって独占されていたことがわかる。その理由も明らかにされる。出版史がかわれば文学史も変わる。先に挙げた、江戸時代三都出版法大概も、非売品ということであり、もっと多くの方の目にとまるように、できればどこぞの本屋さんから出版という形でお願いしたい。

posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月20日

『アプリで学ぶくずし字』刊行近し!

 くずし字学習支援アプリKuLA(クーラ)は、おかげさまで、5万ダウンロードを越えたが、このたび、私達は、大学などのくずし字教育でアプリを使う場合の参考書(マニュアル)として、またふだんWebに接することがなく、KuLAの情報をあまり知らないという方への情報提供書として、そして学校や図書館などにも置いていただくことを想定して、『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習アプリKuLAの使い方』(笠間書院)を刊行することにした。価格は800円+税。オールカラーでわかりやすく親しみやすく作っている。2月中旬に刊行予定である。いま「くずし字」授業のシラバスを書いている方は、参考文献として、この書籍を挙げていただくのに間に合うと思い、刊行前ではあるがここにアナウンスした。版元はもちろん、楽天ブックスでも予約できる。内容紹介はこちらで、このページから、試し読みへと進める。どうか立ち読みのつもりでご覧ください。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

高麗大との研究交流で思ったこと

 昨日、高麗大日語日文科の先生お二方、学生さん三名が、大阪大学文学研究科日本文学研究室を訪問され、研究交流などを目的とするワークショップが開催された。
高麗大から3名、阪大から3名、それぞれ大学院生が20分の枠で発表。活発に質疑応答が交わされた。
高麗大側の発表は、時代・ジャンル・研究領域を超える発想のものばかりであり、日本文学研究側は、細部の実証的手続きを踏まえながら大きなテーマへの飛翔を模索するものであった。ここでは高麗大の発表について記す。
 高麗大側の発表は、@『平家女護島』と『平家物語』、また芥川などを引いて、俊寛とその周囲の人物イメージの変化を捉えようとするもの、ANHK大河ドラマにおける家康と三成の人物像の変化から日本の歴史観・文化観を探ろうとするもの、B日本の武士道の淵源に、鎌倉時代の東国武士の性格があるのではという仮説を主張するもの。というもので、これは日本における日本文学系の学会では、いずれも「ない」発表である。
 NHK大河ドラマについては、原作や脚本の志向・個性、小説・マンガ・ゲームなど他メディアでの扱われ方など、(日本的研究でいう)手続き的な問題についての質問も当然でたが、それ以前に、大河ドラマで日本思想、日本文化を論じると言う研究領域があるらしい(結構先行研究があって)ということが軽い驚きであった。一見、学問的に無理がありそうであるが、そういう問題設定が成り立つというところに、韓国からの日本の見方を理解する鍵があるように思う。つまり発表の中身よりも、発表の問題意識の方に興味を引かれるのである。
 もっとも高麗大の学生たちも、日本側の質問に虚をつかれたり、参考になったと、心から思っているらしいということで、この研究交流の意義はあったと思う。懇親会でもいい意見交換ができた。佛教大学の大学院生のTさん、わざわざ来ていただきコメントもいただいて感謝。また阪大の日本文学・国語学の教員の方が多く参加していただき、貴重なコメントをいただいたことにも感謝したい。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月12日

「みんなで翻刻」が好スタート! 「みんなで翻刻」が好スタート!

 京都大学古地震研究会が10日にリリースしたWebアプリ「みんなで翻刻」が、スゴイことになっている。

 これは地震史料の画像を公開し、そこにアクセスした方に翻刻をしてもらうというものだ。一定のルールに基づいて翻刻してもらい、史料としての利用を便利にしようというものである。初心者でも参加できるように、このWebアプリの中には、くずし字学習支援アプリのKuLAが組み込まれている。PCでKuLAを使いたいというご希望も、私のところに寄せられていたのだが、この問題もこれで解決だ。

 約3000枚を公開、3日とたたず、300枚にすでに手がつけられ、100枚は翻刻が終わっているというのだ。全部終わるのに3年はかかるだろうと見られたのが、このペースでは半年以内には終わってしまう勢いだ。

 一つの史料には、誰でもアクセスできるので、間違いもどんどん訂正されていき、想像以上に正確な翻刻になっているようだ。だから遠慮せずに力試しのつもりで翻刻に参加してもらっていいのである。
 
 翻刻参加者がどんどん現れ、14000字翻刻した猛者もいるのだ。ランキング形式になっていて、誰が何文字翻刻したかが表示される。この翻刻史料を使って、研究も飛躍的に進むというものである。
 
翻刻はプロがするもの、という固定観念は崩された。一般の人でも読める人はかなり正確に読める。そして、力を合わせれば、相当正確な物になっていく。
 
 これって、いろいろなことに応用がききそうだ。
 たとえば「みんなで注釈」とか、「みんなで翻訳」とか。後者はすでにあるかもしれないですね。
そして、この「みんなで翻刻」プロジェクトに、次なるビッグニュースがありそうだ。しかしそれはまた、後日報告となるだろう。ワクワクするような話なので、どうぞお楽しみに。
posted by 忘却散人 | Comment(2) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月09日

世界の写本、日本の写本

 本日、1月9日、明星大学で開かれた勝又基さんのコーディネートによる国際シンポジウム「世界の写本、日本の写本―出版時代のきらめき―」に参加しました。想像を超える有意義な会で、日・中・欧における写本のありかたの違いが浮き彫りになりました。まずチェアの勝又さんが趣旨説明。写本を理解するには版本を無視できないこと、江戸時代は出版の時代と言われるけれど、出版の時代だからこそ、写本がきらめいていたのだというお話。勝又さんはUCバークレーの写本2800点の全点調査をベースに、写本の意味について、学際的・国際的な視野で発信をしていこうとされています。いわば世界のManuscript Studiesの中での位置づけです。
 
 最初の発表者野口契子さん(プリンストン大学図書館司書)のお話で印象に残ったのは、北米の大学図書館では大学の研究・授業との関わりが深いということ。司書のステイタスが高いということは知っていましたが、人文系の授業のほとんどのシラバスが図書館の利用について触れているとうかがって、日米の違いの大きさを知らされました。また、たとえば北米の中世研究をしている大学の授業や、文献を持っている大学、学会、研究会などがWEBで検索できるというのにも驚いた。日本でもやればできそうだがそういう発想はなかったと思う。2360校のうち150校くらいが中世研究に関わる授業を扱っているということがわかるということです。

 次いで高橋智さん(慶応大学斯道文庫)は、写本から版本へという大変革が宋の時代に生まれたとし、我々が認識している中国古典は宋時代以降に作られたものであって、それ以前の姿がわからないと説明されました。その後の写本はよき版本を作るために存在するものであって、中国には写本学はないと。正しく美しい版本が重要なのであり、価値があると。

 次いで松田隆美さん(慶応大学文学部)は西洋の写本から印刷本への過渡期のお話をされ、これまた興味深かったです。グーテンベルク博物館で、聖書の写本が印刷されたように美しいフォントで書かれていて、また手彩色で美しいのを思い出しながら話をきいていました。西洋の写本技術は最高峰に達したときに、活版印刷技術が入ってきた、活版印刷は手彩色で仕上げて、写本並に美しくなることを目指したと。
 中国も西洋も日本とどうもちがうのであります。

 入口敦志さん(国文研)とジェフェリー・ノットさん(スタンフォード大学大学院博士課程)も、半ば発表に近いコメント。入口さんは、複数の写本の校訂で「古典」が作られた時代から、今また画像データベースの公開で再び個別の古典「籍」への着目がはじまったと解説、ノットさんは「世界写本学」というのは成立するのかという問いかけを行いました。ノットさんの問いはきわめて重要で、現時点では「情報交換」「方法の違いの相互理解」の段階であって、世界写本学の構築にはまだ時間がかかるだろうと、パネリストのお答えを聞いて思ったのでありました。

 それにしても、3人の発表時間を1時間15分程度、質疑応答も同じくらいの時間とるのは、私がドイツで経験した研究会の方式と同じ。さすがアメリカ留学経験を生かしているなと思いました。会場には、古典書誌学のSさん、電車が同じだった中世文学のOさん、Kさん、Uさん、近世漢詩文のMさん、Yさん、中古文学のTさんなど顔見知りの面々が。明星のM先生もおみかけしましたが挨拶しそびれてしまいまいた。そのあと、隠れ家的なお店に場所を移して談論風発。楽しくも有益な会でした。ありがとうございます。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする